内分泌内科(甲状腺)とは
内分泌内科では、甲状腺疾患、小児低身長を中心にホルモン分泌の異常で起こる病気(内分泌疾患)を診察・治療いたします。ホルモンは、体の様々な働きを調節している化学物質であり、脳下垂体、甲状腺、副腎などの内分泌腺でつくられています。体の内外で環境変化が生じたとしても、体の働きを常に同じような状態に保つ役割を果たすのがホルモンです。その分泌量は多過ぎても少な過ぎても、体内の恒常性は損なわれ、量の変化に異常がみられると様々な症状・疾患を引き起こすようになります。
甲状腺・甲状腺ホルモンについて
甲状腺は、いわゆる「のどぼとけ」のすぐ下にある10~20gくらいの小さな臓器で、羽を広げた蝶のような形をしていているのが特徴的です。この臓器は、全身の新陳代謝や成長の促進にかかわるホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌します。小さくとも人体の中では最大の内分泌腺です。
甲状腺ホルモンは甲状腺で生成・分泌され、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)により、その量が調整されています。このホルモンには、T4(サイロキシン)とT3(トリヨードサイロニン)の2種類があり、主に細胞による新陳代謝の活性化、交感神経の刺激、成長や発達の促進といった働きを通じて、身体や精神の活性を高めています。
健康な方であれば、常に適正な量の甲状腺ホルモンが血液中に存在しています。ただ、正常レベルよりも多い場合、身体や精神の活動が活発になり過ぎて、イライラ、暑がり、動悸、多汗、原因不明の体重減少、手指の震え、倦怠感、下痢、月経異常などの症状が現れます。逆に不足してしまうと、身体全体の代謝と機能が低下して、むくみや便秘、食欲不振、寒がり、皮膚の乾燥、疲労感、原因不明の体重増加、脱毛、無気力などの症状がみられます。なお、甲状腺ホルモンの量は、血液検査をすれば簡単に測定できます。当院では医師による甲状腺超音波も随時実施可能で、さらに必要に応じエコーガイド下での穿刺吸引細胞診も行います。
甲状腺疾患は女性によく見られる病気
ある調査では、40歳以上の成人女性を対象とした健診において、20%程度の高い頻度で何らかの甲状腺疾患が見つかったという報告があります。男性でも甲状腺の病気に罹ることはありますが、女性の方が圧倒的に患者数が多いことでも知られています。なお甲状腺疾患をはじめとする内分泌疾患は、患者様の症状から、心臓病や糖尿病、脂質異常症、更年期障害、うつ病、認知症など、別の病気と間違われていることも少なくありません。そのため、内分泌疾患か否かをしっかり確認するためにも、一度専門的な検査をお受けになるよう、お勧めいたします。
主な甲状腺疾患について
甲状腺疾患は、甲状腺ホルモンの量が変化する病気、甲状腺内に腫瘤(しこり)ができてしまう病気、そして量の変化としこりの両方が合併する病気の3つに分けることができます。
甲状腺ホルモンの量が変化する疾患
- 甲状腺機能亢進症(ホルモンの分泌量が多い):バセドウ病、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎 など
- 甲状腺機能低下症(ホルモンの分泌量が少ない):橋本病(慢性甲状腺炎)、粘液水腫、手術後甲状腺機能低下症、アイソトープ治療後 など
甲状腺内に腫瘤(しこり)ができてくる疾患
- 良性腫瘍:腺腫様甲状腺腫、嚢胞、腺腫 など
- 悪性腫瘍:甲状腺がん(乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がん)、悪性リンパ腫 など
甲状腺にできた腫瘍がホルモンをつくり出し、甲状腺機能亢進を示す病気
- プランマー病(甲状腺機能性結節)
こんな症状の方はご相談ください
- 首に腫れや痛みがある
- 体がむくむ
- 目が突出してきた
- 喉に違和感がある
- 声がかれる
- 安静にしているのに、心臓がドキドキする
- 手指が細かく震える
- 暑がりになり、水をよく飲み、汗をたくさんかく
- よく食べているのに痩せてきた
- 下痢をよくする
- イライラしやすくなった、落ち着きがなくなった
- 理由も無く体重が増えた
- 体が冷え、寒がりになった
- 肌が乾燥し、カサカサする
- 体が重く、だるさを感じる
- 食欲が無いのに太ってきた
- 朝起きた時に、顔や手がむくんでいる
- 便秘をしやすくなった
- 昼間も眠く、居眠りをするようになった
- 脈がゆっくり静かになった
- 月経不順になった
- やる気が出ない など
小児低身長
こどもにはそれぞれの個性があり、身長や発育も違います。発育のパターンもそれぞれで、ゆっくり伸びるこどももいますが、一方では早く身長が伸びてしまって、その後はあまり伸びずにいるこどももいます。このような個性豊かなこどもの発育の中で、病院で治療ができる低身長があります。こどもの身長が低い原因の多くは、ご両親も背が低いなどの遺伝や体質によるものです。しかし、なかには成長ホルモンなどの身長を伸ばすホルモンが出ていない場合や、まれですが、染色体や骨の病気によってお子様の身長が伸びない場合もあります。また、小さく生まれて、その後の身長があまり伸びないお子様もいます。これらの病気はそれほど多くはありませんが、早めに治療を受けることで身長が伸びます。
お子さんの身長が気になる場合は、成長曲線を描いてみましょう。成長曲線とは男女別にたくさんのこどもの身長や体重の記録を集めて、年齢別に身長や体重の平均値や標準偏差を曲線で示した表のことです。-2.0SDから +2.0SDの間に約95%のこどもが含まれ、-2.0SD以下の低身長のこどもは100人のうち2~3人くらいの割合になります。お子さんの身長の伸びが標準的な範囲( -2.0SDから +2.0SD )を大きく外れていなければ、通常はあまり問題ありません。しかし、平均身長との差が大きい場合や身長の伸びが悪くなっている場合には病気が原因のこともあります。また、身長が伸びすぎる場合にも思春期早発症などの病気がかくれていることがありますので、注意が必要です。
当院では小児低身長の診察、検査、治療が可能です。お子さんの身長が気になる場合は、母子手帳や今までの成長の記録をお手元にご用意の上、診療時間中に一度お電話にてご相談ください。受診の調整をさせていただきます。
小児低身長の診断には、血液検査、レントゲン検査(骨年齢測定)に加え、内分泌負荷試験が必要です。当院では、外来にて内分泌負荷試験を試行しており、入院をせずに診断が可能です(年齢などにより入院での検査が望ましい場合には、専門病院と連携し、ご紹介する場合もございます。)
成長ホルモン分泌不全性低身長症、SGA性低身長、思春期早発症による低身長など、治療可能な低身長症と診断された方に対しては投薬治療、生活指導を行います。一般に低身長症の治療には長期間を要しますが、その間医師、看護師が親身になってお子様、保護者様のフォローに当たります。なんでもご相談ください。